あがた森魚の最新アルバムタルホロジー。ジャケットも含めて丁寧な作り。どこまでも日本的でありながら、ちょっとした瞬間に覗く世界中の音楽要素に目がくるくる。そんなサウンドに導かれて、年を重ねる毎にいい塩梅になっていくあがた森魚のボーカルが乗る。全曲解説で久保田麻琴はあがた森魚のボーカルをジョアン・ジルベルトと比較していた。なるほど、何年経っても自分のスタイルを真摯に突き詰めているにも関わらず、堅苦しくなく肩の力の抜けたそのスタイルは、その後の姿も含めて最も楽しみな日本のシンガーだ。そういう見方もあったのか。
蓄音盤やベルウッド3作品に見られた激情を押えることなく咽び泣くような情感のほとばしりから35年。いつの間にか少年は少年の心を持ったまま芯はぶれることなくいい塩梅で年を重ね、和製ジルベルトの位置にちょこんといた。驚異だ。